人生のどん底、襲い掛かった2つの苦難
最初の仕事は旅館の仲居でした。そこでおもてなしの基礎を学びました。後に中古車販売業で独立するものの、資金繰りに苦しみ、お金を集める手段として始めたのが遺品整理事業だったのです。培ってきたおもてなしの精神で一生懸命取り組みました。少しずつ仕事をもらえるようになって来たころです。現場に向かっている道中突如として大事故に見舞われました。運転していた軽自動車が大破し、生死を彷徨いました。生きていることが奇跡で二度と歩けないだろうと言われました。しかし、これで人生を終わらせたくないと、懸命にリハビリをし、なんとか歩けるまでに回復。3か月の入院生活を経て、退院を果たしました。生きることに対してより一層深く考えさせられた経験でもあり、きっとこの先の人生で役に立つだろうと思っていた矢先です。家に戻ってみると家族はすでに崩壊寸前。長らく私が留守にしたことで、精神疾患の持病があった妻は追い詰められており、荒れ果てていました。ところが、当時の私はその状況をすぐには受け止められず、失望と怒りの矛先を妻に向けてしまったのです。「お前がちゃんとやらないからこうなったんだ」。そんな言葉がとどめを刺してしまい、妻は自ら命を断ったのです。事故以来、見出した微かな光が消えてしまいました。全て自分のせいだと責め続けました。それでも、子どもや社員がいるので、仕事を辞めるわけにはいきません。必死に活路を探しました。その中で、青年会議所の例会事業で講演をされた青木社長の「成功は技術だ」という言葉に、こんな自分でも救われるかもしれないと思い、すがるように受講したのが『頂点への道』講座だったのです。
逆境を力に転換させる兆しとの出会い
学びを進める中で、最も価値があったのは「選択理論」との出会いです。「人は外からの刺激ではなく、内側の願望に動機づけされる」。それは私には無かった考え方でした。強く圧力をかければ人は動く、ずっとそう思っていました。「人間関係を破壊する7つの致命的習慣」がありますが、その全てを使っていました。善意のつもりが、なぜ周囲は苦しむのか、その理由が全て紐解けました。そして、そんな根強い考え方も、努力次第で変えることが出来ることも学べました。実際に先輩受講生が話された自身の体験にも衝撃を受けました。「かつては自殺を考えていたほど、暗闇に生きていた、しかしこの学びに出会ってから人生が変わっていった」。そう語る姿が、私にとっては輝かしく見えました。ここで学び続けたら、私もあのようになれるのかもしれない。未来に希望を抱き、のめり込むようにしてシリーズ全てのコースの受講を進めていきました。
ミッションが人を動かし、約3倍に成長した組織
振り返ると、受講で得られたものは「ミッション」でした。過去の経験を通して培ってきた死生観はもちろんありましたが、この仕事の根底にある使命や、社会に届ける価値、そのために私たちが果たすべき役割を、明確に言語化できました。遺品整理の現場では、想像を絶する状況に出会うことが日常茶飯事です。孤立死となれば、死後1か月放置されてようやく発見されることもあります。そんな状態で作業をする過酷な仕事です。しかし、捨てられるはずだった遺品から、遺書や遺産が出てくることも少なくありません。鮮明に記憶に残っているある現場では、計5000万円の遺産と、隠されたかのように枕カバーの中から遺書が見つかりました。そこには、家族への思いが綴られていました。生前断絶した関係となってしまい、直接伝えられなかった思いです。それをご家族に手渡すと、涙を流しながら亡き父への感謝の気持ちを口にしていました。
どんな現場であっても、故人の魂が存在していた場所です。その故人とは、誰かにとっての家族であり、大切な人が必ず存在します。私たちの使命とは、故人と遺族の絆をつなぎ直すことなのです。だからこそ、現場を丁寧に扱い、大切な遺品を捨てるのではなく次につなげるというこだわりを貫き通してきました。そして、私のこの思いを伝え続けていった結果、メディアが注目してくださり、テレビや雑誌、ラジオ、新聞などと数多くの取材をうけるようになりました。そのおかげもあって、共感して門を叩く人が徐々に増え、初受講から3年が経った今、3名だった社員は11名に増え、1店舗が今は3店舗に拡大しました。大切にしている価値観に共感した人材だけなので、特別に指示を出さなくても私と同じ判断基準で主体的に働いてくれます。現場を離れることもしばしばありますが、スタッフが私の分までカバーしてくれています。また2016年には、青年会議所での45名の会員拡大にも成功しました。
苦難を経てきたからこそ伝えられるメッセージ
おかげ様で青年会議所を始め、様々な講演依頼をいただくようになりました。お伝えするのは「命の価値」です。この社会で起っている孤独死や自殺は決して他人事ではありません。人間関係が破壊される前に、価値ある情報を得ることできたら、必ず孤独死や自殺を減らせます。他でもなく、妻を亡くした私がまさにその当事者の一人なのです。
生きている間に、どれだけ険悪で断絶した関係性だったとしても、心の底ではきっと、良好な関係を取り戻したいのが本音です。しかし、コミュニケーションの方法がわからないから、その本音を表現できていないだけなのです。大切な人が存命している間に良い関わりを学び実行すること、これを社会に啓蒙していくことが今の私たちに課せられた新たな使命だと感じています。
これを講演でお伝えしているのです。メッセージを聞いてくれた方の背後には家族がいて、私のメッセージによって、少しでも変化が生まれていくのであれば、命がけで伝え続けていきたいと思っています。そしてこの使命に生きた先に、さらに協力者が生まれ、今以上の繁栄が巡ってくることを確信しています。