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「社員を守りたい」という決意が会社を変えた倒産寸前の町工場から「世界一の車いす」誕生までの軌跡

橋本 裕司橋本エンジニアリング株式会社 代表取締役社長
課題
目標は着実に達成するも
燃え尽き症候群に悩む日々
世間の逆風に耐えられず
断腸の思いでリストラを決行
社員の入れ替えが激しく
毎日のように面接を行う
効果
人生の目的に出会い
頑張る理由が明確に
自社ブランドを確立し
社員の雇用を守れる会社へ
社員との関わり方を変え、
人が辞めない組織に

拡大し続ける会社とのギャップ
燃え尽き症候群に苦しむ日々

昔からいわゆる「燃え尽き症候群」でした。目の前のことにがむしゃらに生きてきた人生。しかし、なぜか目標を達成した瞬間に心が冷めてしまう。その理由が分かりませんでした。
前職の釣り具メーカーで営業をしていたとき、疎遠になっていた父の会社が倒産しそうだという話を耳にしました。そこで自動車部品を製造するその小さな会社に次期後継者として入社。「絶対に赤字を脱却してやる!」。私は一度決めたら何がなんでもやる男です。冷めきっていた心に再び火が付きました。
一人前になるため、28歳で工業高校に入り直して基礎を学び、昼は現場で、休日は図面の勉強に励む日々。少しずつスキルが身につくと、他社が嫌がる仕事を積極的に受注。地道な努力が実を結び、6年後ついに赤字から脱出しました。社員9名・売上5千万円の大赤字だった会社は、いつしか社員100名・売上10億円の会社に成長を遂げていました。しかし喜びも束の間。手にしたのはやはり燃えていた火が静かに消えていく感覚でした。
伸び続ける業績と冷めていく自分。そんなとき知人から勧められたのが『頂点への道』講座です。2007年に初受講し、燃え尽き症候群の原因は、人生の目的となる土台がないことだと気づきました。再受講を続け、人生の目的を「縁ある人を物心ともに幸せな人生に導く」と決めました。そして翌年の2008年に社長に就任。「目的も定まった。これからだ!」と思った矢先、人生最大の壁が立ちはだかりました。

立ちはだかる壁、社員を守る決意

2008年、世界をおそったもの。それはリーマンショックです。売上は4分の1に。まずは迷わず自分の給料を10分の1にカットし、社員の雇用を守るために知恵を絞りました。しかし売上が下げ止まることはありません。あらゆる手を尽くすも状況は悪くなる一方。ついにメインバンクが会社に乗り込んできました。100人全員で溺れ死ぬか、一部の社員を切り捨て組織の存続に賭けるかの判断を迫られたのです。
当時の私にはリストラ以外の選択肢はありませんでした。感じたことのないみじめさ・悔しさを噛みしめ、対象の30名の社員一人ひとりと向き合い、何度も頭を下げました。解雇を告げた瞬間の筆舌に尽くし難い社員の顔は今も忘れません。
しかし、首の皮一枚で繋がった会社にも残ってくれている社員がいる。ついてきてくれる社員がいる。後ろを向いている暇はありません。絶対に社員を幸せにする経営を目指すと心に決めたのです。

下請け会社から自社メーカーへ

稼げる会社になるため、目標に掲げたのは「下請けからの脱出」。技術力を活かせる場所を探していたとき、介護・福祉業界で車いすの軽量化がブームだと知り、自社のオリジナル商品として車いすをつくることを決意しました。しかし、車いすは高齢者や障がい者など、足の不自由な人が乗るもの。ぽっと出の会社の車いすを扱う販売店はなく、信頼を得るための知名度と実績が必要でした。ここから「世界最軽量の車いす」開発への挑戦が始まったのです。
「もっと軽くできないだろうか」と試行錯誤を繰り返す日々。初めはまったくうまくいかず、金型ひとつ数百万円が一発でダメになります。開発に2億円以上を費やしました。
なんでこんなに金がかかるんだ。何度もやめようと思うたびに、立ち返ったのはやはり目的です。リーマンショック以降、『頂点への道』講座を3年間で計5回再受講。受講を重ねるたびに、社員を守るため、世界一の車いすをつくりたいという想いが強く明確になっていったのです。その実現のため自社にない技術を求め、様々な企業に足を運び協力を求めました。門前払いされることも多々ありましたが、少しずつ想いに共感くださり力を貸してくれるようになったのです。
苦労の末、念願の車いす「MC-X」を完成させることができました。そしてまさに、この目的の力が生み出した車いすが2014年「GOOD DESIGN AWARD(※1)」を受賞したのです。その後に開発した車いすも次々と受賞。そして2024年パリパラリンピックでは競技用車いすの開発をサポートした小田凱人選手と田中愛美選手がダブルで金メダルを獲得しました。自社の技術力が世に知れ渡り、理想が着実に現実化していったのです。

社員を守り抜き、縁ある人を幸せに導くリーダーへ

橋本エンジニアリングは2015年から「ワクワク大作戦」というものを実施しています。社員がワクワクするような目標設定を一緒に考えたり、2か月に一度の社内イベントを企画したりと、社員が働きやすい環境づくりに取り組んできました。
そのかいもあり、2020年に訪れたコロナショックでは売上が3分の1になるも、誰ひとり欠けることなく乗り切りました。「何がなんでも社員を守りたい」という想いが、私に経営者としての覚悟と目的からブレない生き方をもたらしてくれたのです。
私が目指しているのは、入社した社員が定年を迎えるとき「ここを選んでよかった」と言ってもらえる会社をつくることです。社員にとって居心地の良い会社をつくりたいですし、さらに社会にとって無くてはならない会社を追い求めていきます。これからも「縁ある人を幸せに導くリーダー」として、熱く挑戦し続けてまいります。

プロフィール
1967年静岡県浜松市生まれ。静岡県浜松市の自動車部品メーカーで代表取締役社長を務める。2009年リーマンショックにより大きなダメージを受けたが、社内スタッフをはじめ多くの人の協力を得ながら、介護福祉、モビリティなど5つの事業を起こし、業績を6年で5倍に成長させる。また多くの新事業を起こしたことで経済産業省「2018年度はばたく中小企業300社」に選出。車いす3車種がグッドデザイン賞を受賞。うち「MC‐X」はBEST100&未来づくりデザイン賞も受賞。2024年パリパラリンピックで競技用車いすの開発をサポートした、車いすテニス小田凱人選手と田中愛美選手が金メダルを獲得。
2024年パリパラリンピックで金メダルを獲得した小田凱人選手
社員がワクワクして働ける職場を目指している

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