会計事務所としてトップ1%を実現するも、幸せを感じない日々
私は、早稲田大学卒業後1993年に監査法人トーマツ(現:有限責任監査法人トーマツ)に入所しました。その後、同僚が立ち上げたコンサルティング会社で副社長に就任。多くのベンチャー企業のIPO支援に携わり、2002年、33歳で独立しました。当初はIPO支援を強みにしていましたが、徐々に多角化を図り規模を拡大。リーマンショックをはじめとした環境の変化もありましたが、創業から20年、お客様と仲間に恵まれ、お陰様で業界トップ1%にあたる社員数300名規模へと成長しました(2024年2月現在で、社員数は400名規模へと成長しました)。
世間からみれば、上手くいっているようにみえたかもしれません。しかし、いくら目標を達成しても、心から幸せを実感できない自分がいました。同時期に最愛の父が病に倒れたこともあり、自分の人生を見つめ直していたタイミングでもありました。そんな折、トーマツ時代の後輩に勧めてもらい2023年2月に『頂点への道』講座を初受講しました。
受講をとおして向き合った、人生の「目的」
3日間の受講をとおして向き合ったのは、経営者としてではなく、一人の人間としてどう生きるかという人生の「目的」。経営者として、会社では理念やビジョンを掲げ、目的の重要性を語ってきました。しかし、個人の人生の目的は考えたこともありませんでした。
「仕事の中に人生があるのではない。人生の中に仕事がある」。青木社長のメッセージに衝撃が走りました。創業から20年、本気で仕事の中に人生があると思っていたのです。社員にもそう伝え、目標達成への情熱を燃やしていました。ついてくる人がいる一方で、辞める人は辞めていく。転職の多い業界ですから、そういうものだと言い聞かせていました。そして、家庭でも経営者のようにふるまい、気づけば妻や息子との関係も微妙なものになっていました。改めて、一人の人間としてどう生きたいのか。こう問いかけたとき「家族・社員を本気で幸せにしたい」という強い想いが湧きあがりました。
外的コントロールを排除し、自主性を重んじる関わりへ
受講後、まず取り組んだのは選択理論を土台にしたコミュニケーションです。それまでの私は「成果を上げていない社員には時間を使わない」というスタンス。関わった社員には自分の理想や正しさを押し付けていたように思います。「人は内側から動機づけられて行動を選択する」と学び、面談時は相手に寄り添うようにコミュニケーションを変えました。そして、社員との面談の優先順位を上げ、一人ひとりと向き合う時間を確保しました。
さらに、幹部向けにi-Standardを導入。実は事業の多角化やM&Aによる組織の拡大で、理念浸透・社員育成に課題を感じていたところでした。創業当初は私自身も第一線でコンサルタントをしており、お客様の多くが私の「ファン」。まさに「BtoF戦略」を実践していました。しかし、コンサルタントから経営者になる過程で「ファン」ではなく「顧客」へと関係性が変わっていたのです。i-Standardや『頂点への道』講座の受講をとおして「BtoF戦略でお客様にファンになってもらおう」「社員の理念への共感をつくろう」と目指すものを再確認。共通言語ができ、幹部との絆が芽生え始めていると感じています。
プライベートでも時間の使い方やコミュニケーションを変えようと挑戦中です。以前は妻や子どもに対して、理想を熱く押し付け、時には相手を論破していました。ふとしたときに以前の私に戻りそうになる時もあるのですが、学んだことを少しずつ実践しています。小さな挑戦を積み重ね、「毎日が楽しい」と精神的な充実感を得られるようになりました。
中小企業の支援をとおして日本に貢献し、魅力ある業界へ
現在、会計税務業界は変化の中にあります。会計士は企業のコンプライアンス問題やグローバル化の波もあり、人気が高まる一方で、税理士は10年前と比べて、受験者数が半減。稼げない、魅力のない仕事だと思われているのです。しかし、私はそうは思いません。中小企業経営者に真に寄り添えるのは私たちのような存在。税理士・会計士とは、経営者とともに「明日を創る」仕事です。
私はこの業界をもっと魅力のある業界にしていきたい。そのために成長し続け、結果を出し、総合コンサルティングファームとして新たなあり方を提案していきます。
2022年、300名体制の会社になったとき、10年後の目標を公言しました。それは「2032年に1,000名体制、2042年に5,000名体制を実現する」というものです。この目標を達成するなかで、私たち会計事務所が、中小企業経営者のよきパートナーとなり、中小企業の発展をとおして日本に貢献することができると確信しています。
これからも、一人の経営者として、一人のプロフェッショナルとして、情熱を燃やし続けていきます。