売上を求め、孤独感と焦りを抱く日々
25歳のときに税理士業界に入り、3つの税理士事務所を経験。32歳で独立開業しました。開業当初は経営の仕方も分からず、とにかく売上を求めて必死に営業する毎日。当時は1歳と生まれたばかりの子どもがいましたが、自宅へ帰るのは夜遅く、妻と子どもの寝顔しか見れない日々でした。「何のために仕事をしているのだろう」という孤独感、「一刻も早く軌道に乗せなければ」という焦りを感じていました。そんなとき、顧問先の経営者から「この講座だけは受けとかなあかん」と勧められたのが『頂点への道』講座でした。
社員20名中19名が離職する試練と直面
受講して一番響いたのは、「事実は一つ、解釈は無数」という考え方です。受講して間もないころ、仕事で辛い思いをして自宅へ帰ると、妻がお笑い番組を見て大笑いしていました。私は思わずイラッとしましたが、この言葉を思い出しました。そして、「私が世間の荒波から防波堤となって安心安全な空間をつくり、妻を守ってあげられている」という解釈を選択してみました。すると、誇らしい気持ちになれたのです。この体験で本当の意味で腑に落ち、物事を肯定的に解釈するようになりました。
講座の学びを活かし、受講から10年間で社員1名から20名の税理士事務所にまで成長。いろんな事務所を渡り歩くのが当たり前な業界では稀な、離職者ゼロを10年間継続。それが自慢で鼻が高くなっていました。同時に学びからも離れていきました。しかし、思わぬ試練が待ち構えていたのです。
開業から10年目の2013年。一人の古参社員が退職。それをきっかけに、一人、また一人と辞め、1年半のうちに社員20名中19名が離職する事態に発展したのです。毎月一人のペースで人が辞めていく現状を目にして、次第に社員を信じられなくなりました。顔色を窺い接しながらも、心のなかでは「いつか辞めるんだろう」と疑心暗鬼に陥っていました。当時は社員が辞めると言い出す夢にうなされるほど。会社をたたむことさえ考えました。
転機となったのは妻の言葉でした。正直な気持ちを吐露すると、妻は「しんどければ、やめればいい」と言いました。最初は無責任な言葉だと思いました。でも、そのとき初めて「やめる選択肢があるのになぜ自分は続けているのだろう」と自問自答したのです。私は困難な状況に直面し、不幸にさせられているのだと、つい辞めていった社員や環境のせいにしていました。しかし、そうではなく、私にはこの仕事を通して実現したい未来があり、大切にしたいお客様がいて、作りたい組織がある。だから、こんな状況でも踏ん張り頑張っているのだと、改めて気がついたのです。「もう一度原点に立ち返って学び直そう」そう思い、離れていた講座受講に踏み切ったのです。
再受講で気づいたパワーパートナーの大切さ
再受講で得られた学びはパワーパートナーの大切さです。思い起こせば、会社が崩壊していったのは、創業時から私をフォローしてくれた女性が退職してからでした。彼女は私の知らないところで、私がゴルフに行けば「銀行との関係をつくっている」と言動をボイスチェンジしてくれていたのです。しかし、彼女のボイスチェンジが機能しなくなったことで、私に対する不満や虚言が広まり、社内の秩序がボロボロに。経営者の言動をボイスチェンジするパワーパートナーがいかに大切なのか実感したのです。そして再起を図るころ、私と一緒にやりたいと言ってくれる二人の人物が現れました。今度は表面ではなく人生レベルで関わり、本気で二人のパワーパートナーになろう。そう固く決意しました。
青木社長から、パワーパートナーとは「あなたが成功させたい人で、その人の成功があなたの成功となる人のこと」と教えてもらい、二人が成功することを必死で考えました。毎月一回、「サシ飲み」と称して幹部との時間を取り、二人の願望や、二人が望んでいることに対して私がどのくらい支援できたのか確認していきました。はじめは二人の願望が見えてきませんでした。しかし、本気で成功を叶えたいと支援する関わりを続けることで、本音で話せるようになり、二人の願望に寄り添い支援できるように。次第に二人が私のビジョンや理念をボイスチェンジして、組織に私の考えが浸透するようになりました。
原理原則から外れそうだと感じたときは再受講を繰り返して、一貫した考え方を身につけていきました。グループ会社の代表は、パワーパートナーの幹部二人に任せました。私を信頼してくれる二人の力を借りることで、社員75名の組織にまで拡大することができました。
一緒に経営に携わり、社長を元気にする
社員の大量離職で深い孤独感を味わいましたが、大きな失敗をしたからこそ、パワーパートナーの大切さに気づくことができました。
私たちの会社のビジョンは、「社長を元気」にし、「100年企業」に導くことです。顧問先の社長の想いを汲み取り、好業績と良好な人間関係を両立できる会社に導き、ともに未来を創っていく。そんな事業承継の問題を解決できる存在であり続けたいと考えています。そのためには、幹部というパワーパートナーの協力が不可欠です。これからもパワーパートナーを守る存在であり続けられるよう、学びを深めてまいります。