恐れに支配されるスポーツ教育に釈然としない日々
1995年に現役を引退して以降、解説の仕事を中心に活動してきました。サッカーW杯も7大会に亘り解説させていただき、たくさんの一流チームを見てきました。そのなかで感じたのは、一流チームは監督と選手が深い信頼関係を結び、選手は自らの役割を理解して思い切ったプレーをしていること。一方で上位に勝ち残れないチームは、どこか監督と選手間の雰囲気が悪く、選手はミスをすることを恐れながらプレーしているように感じました。
また、私は前々から子どもに対するスポーツ教育に疑問を抱いていました。確かにいまの子どもたちは、技術も知識も昔と比べて遥かに上です。しかし、指導現場では、「なんで敵が多いところに突っ込むんだ!」「教えたことと違うだろ!」など子どもたちを怒鳴ったり、プレッシャーを与えたりするマネジメントが蔓延しています。その結果、指導者の言葉を気にしてプレーするようになり、子どもたちから自主性が失われてしまったのです。
そんなモヤモヤした感情を抱いているとき、友人からの紹介で『頂点への道』講座を受講して衝撃を受け、自分が求めるスポーツ教育のエッセンスがここにあると感じ、継続学習を決めました。
受講を通して内発的動機づけが効果的だと確信
特に学びとなったのは選択理論心理学です。人は外からの刺激で行動するのではなく、自分の内側にある願望に向けて自ら行動を選択しているという理論は私の人生をクリアにしてくれました。
これまでさまざまな監督や指導者にお世話になりましたが、ある監督は練習でミスをしたら走り込みをさせる、気に入らないことがあるとすぐ怒鳴るなど、選手に厳しい方でした。批判する、罰する、ガミガミ言うなど、刺激を与えて選手をやる気にさせようとしていました。選択理論では、他人をコントロールできるという考え方を「外的コントロール」と呼びます。確かに監督はチームを勝たせたい想いの強い方でした。しかし、外的コントロールを使った指導によって、多くの選手がサッカーをやめていき、可能性の芽を摘むことになりました。このときに私は、想いは重要だが、外的コントロールによる指導は人の可能性に蓋をすると気づいたのです。
逆に願望を引き出すことで人の自主性が育つという経験を大学4年生のときにしました。キャプテンに任命され、チームをまとめることになった私は、サッカー部の方針を変更。試合前のミーティングでレギュラー選手だけでなく、準レギュラーやサブの選手から意見を出せるようにしたのです。次第に誰もが意見を出せて、よい意見は積極的に取り入れる仕組みが浸透していきました。その結果、チームが安心安全な空間となり、選手がより主体的に練習に取り組むようになったのです。
私たちの行動は内側から動機づけられているという「内発的動機づけ」の考え方を学び、自分の経験も踏まえて、これこそスポーツ教育において効果的だと確信しました。内発的動機づけは、選手の自主性を育むのに役立つだけではありません。何事も物事を成し遂げるためには継続することが大事です。人は自分の願望に向かって行動を選択していくので、願望が強ければ強いほど簡単には折れなくなります。選手の願望を明確にし、支援しながら目標に向かってサポートしていく人こそが真の指導者だと学んだのです。
継続学習を通して効果的な努力が整理されていった
アチーブメントの継続学習を通して、自分の人生も整理されていきました。少年時代、私はサッカーのことしか考えていませんでした。学校の休み時間も放課後も家に帰ってからもボールを蹴っていました。サッカーのために生きていたといっても過言ではありません。なぜ、そこまでサッカーに夢中になれたかというと、二つ理由があります。一つは、フランス人を父親に持つという生い立ちが関係しています。どこに行っても好奇の視線を浴び、不本意なあだ名で呼ばれる私にとって、サッカーが自分の存在をアピールする手段でした。もう一つは、単純にサッカーというスポーツの魅力にはまったからです。周りの敵を抜き去ってゴールネットを揺らした瞬間の達成感は何にも代えがたいものでした。
サッカーに夢中でうまくなりたい気持ちは人一倍強く、がむしゃらに練習に取り組みました。誰よりも練習してプロになることもできました。しかし、アチーブメントで「成功は技術」だと学び、目標から逆算して計画を立て、日々の実践を行うことで、より効果的な練習になると気づきました。目標達成の技術を体得することで、練習方法や考え方が整理されていき、子どもたちにより効果的な努力につながる指導ができるようになったのです。
スポーツをする子どもたちの可能性を引き出すために
継続学習を通して見つけた価値があります。それは、熱い指導者に選択理論とアチーブメントテクノロジーがスポーツ教育で効果的だと伝えていく使命を引き出してもらったことです。恐れに支配されるスポーツ教育にモヤモヤしていた私が、求めていた教育のエッセンスを学び、自分の考え方にも生き方にも一本のラインを通すことができました。その恩返しとして、身につけた知識や技術、自分の体験を多くの人に伝えていく。そこに自分の活かし方があると、いまでは本気で思っています。
世の中には、まだまだ夢も希望ももてなかったり、自殺をしてしまったりする子どもがいます。これは本当に悲しいことです。子どもを育てていくのは大人の責任です。未来の子どもたち、学校の先生、親たちのために、選択理論とアチーブメントテクノロジーを伝えられる講師となるべく、学びを重ね、さらなる高みを目指して突っ走っていきます。