Step1 経営者の自己変革「願望の押しつけから傾聴へ」
―理念経営の実現は、経営者から始まる。渡邊勝也氏が代表を務める税理士法人 クオリティ・ワンも例外ではありません。渡邊氏が『頂点への道』講座をご受講後、幹部・メンバーが続いてご受講され、組織向け研修のi‐Standardや数々の教材も導入されてきました。クオリティ・ワンのお三方にお話を伺う上で、まずは渡邊氏に、ご自身から始まった「理念経営への変遷」を伺いました。
<受講歴>
- 2015年7月 スタンダードコース初受講
- 2015年9月 ダイナミックコース受講
- 2015年10月 経営実践塾(初受講)スタート
- 2016年1月 ダイナミックアドバンスコース受講
- 2016年8月 ピークパフォーマンスコース受講
- 2017年4月 ベーシックプロスピーカー合格
- 2017年4月 ボースウィンマネジメントベーシック初受講
- 2017年9月 ボースウィンマネジメントアドバンス初受講
私が初めて『頂点への道』講座スタンダードコースを受講したのは、独立後約5年が過ぎた頃です。事務所立ち上げ当初から売上は順調に上がっていましたが、3年目ころからはそのことに対する達成感や喜びが次第に薄まり、5年経ったときにはほぼ完全になくなっていました。代わりに心を占め始めたのは、年間離職率80%超まで達していたメンバーとの人間関係。どうしたらいいかわからなかった私は、「自分がさらに成果を上げて注目されれば、立ち込めた暗雲を突き破り、メンバーが離れない天国が待っているはずだ」と本気で信じていたのです。だから、私が初受講の際に求めていたのは、「自分自身の目標達成力の向上」でした。
転機が訪れたのは、約半年後でした。「受講するなら、最大限の学びを得たい」と思った私は、講座のテキストを丸暗記したのです。今振り返ると、それまでの受講ではきっと、自分にとって都合の良い内容しか頭に入っておらず、本当に必要な「選択理論心理学をもとにした良好な人間関係を築く方法」は、軽く聞き流していたのだと思います。「私が成果をいくら上げても、離職は止まらない。私がメンバーの話を聴かず、心から受け入れていないことこそが真の原因なんだ」丸暗記して臨んだ講座で気づいたのは、このことでした。「辞めていった者も含めメンバーは皆、『この事務所で自己実現したい』と思い、さらに言えば、私との関係に悩みを抱えながらも『いつか良くなる』と可能性を感じてくれていたからこそ毎朝出所してくれていたんじゃないか」ワークのなかでメンバーのことを考えれば考えるほど申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。常に期待を寄せてくれるメンバーを拒んでいたのは、考えを押し付け、メンバーの願望や話に一切耳を貸さなかった自分であるということを痛感したのです。同時に、残っているメンバーに対して深い感謝も湧き上がってきました。
状況を変えるため、私がまず徹底したことは実にシンプル。社員の話をしっかり聴くようにしました。経営判断をする際にも、事前に幹部の意見を聴くように心がけました。当然、長年の習慣はそう簡単には抜けず、独断で経営判断をした際には幹部から「相談してくれるんじゃないんですか」とメールが送られてくることもありました。以前の私なら受け入れられないメールですが、自分が変われば組織が変わるかもしれないと可能性を感じていた私は、その都度反省をし、改善をしました。
また、経営判断だけでなく、メンバーの願望にも耳を傾けるようになりました。それまでは8割方私が話していた面談を、8割方メンバーの話を聴く時間に切り替え、「メンバーが何を大切にしているのか」「どんなことを成し遂げたいのか」を教えてもらう時間に変えました。そして、そこでメンバーから教えてもらった願望は記録に残し、手帳にはさんで毎朝全員分を読み上げるようにしたのです。それまでの私がいわゆる「ワンマン」だったこともあり、はじめはなかなか話しにくそうなメンバーもいましたが、私の取り組みを見ていてくれたのか、徐々に心の内を話してくれるようになり、私がメンバーの願望の実現をサポートできるようになりました。
組織に変化が生まれ始めたのは間違いなくこのときからで、そのはじまりは他でもない私自身の思考と行為の変化でした。
Step2 幹部への理念浸透「代表とメンバーを繋ぐ通訳へ」Step3 スタッフへの浸透「リーダーを担い理念浸透を率先」
―経営者の自己変革だけでは理念経営は実現しません。そのためには、メンバーの自己変革や理念の浸透が必要不可欠です。渡邊氏は、「メンバー一人ひとりが『頂点への道』講座で学んでいってくれたことが、最大のカギだった」と振り返っています。メンバーがどのような自己変革を起こし、どのように理念が浸透していったのか。役員を務める植木敬子氏と、新卒第1号で勤務歴3年のメンバー丸山亜佳梨氏に、お話を伺いました。
幹部による通訳が「受け継ぐ」文化を創る
Q. 植木様は渡邊代表の初受講から約1年後、丸山様は入所約1年半後に、スタンダードコースを受講されていますが、それぞれご自身にはどんな変化や成長がありましたか。
植木 一番の変化は、「この組織を誰一人漏れることのない、みんなにとって良いチームにしたい」と気づいたことです。おそらくそれまでも心の底では思っていたのですが、はっきりと認識したことで行動が変わりました。気づくきっかけとなったのは、『頂点への道』講座のダイナミックコースでトレーナーに尋ねられた一つの質問です。「植木さんは税理士事務所をどうしたいんですか?」自分の人生や価値観について深く考える中でいただいたこの質問が、その後もずっと頭のなかに残り続けました。すぐには答えが出ないものの、確信があったのは「メンバーに何かを与えられる人でありたい」いうこと。その思いを渡邊にも伝え、当時マネジャーだった私は、仙台のオフィスにも通いながら多くのメンバーと接するようになりました。そのときにふと気づいたのです。幸せじゃないというのは何か不満があるということ。その不満は「何かに納得できていない」から出てくるものです。過去を振り返るなかで、「納得の先にある笑顔」が見られたときに喜びを感じていた私は、この組織でもその笑顔を増やしたいと思ったのです。私に向けられた質問に限らず、メンバーが感じる渡邊の言動に対する疑問にも、私が渡邊の考えを通訳することによってメンバーが真意を理解し、笑顔で納得してくれることが、私の喜びであり、長年ともに仕事をしてきた私の使命なのだと思います。
丸山 実は私も、植木さんの関わりに助けられた一人です。今は代表の渡邊のことを心から尊敬し、この組織が大好きですが、特にはじめの1年は辞めようかと考えたこともありました。でも植木さんに話を聴いていただき、説明していただくなかで、実は自分が大切にしている価値観と代表の考えはリンクしているということに気づき、代表の考えに心から共感できるようになっていきました。
私が最近成長したのは後輩のマネジメントです。ビジネス選択理論能力検定に向けて、成果と人間関係を両立する「リードマネジメント」を勉強しました。すると、これが代表をはじめ、植木さんや先輩方から今まで私が受けてきたマネジメントそのもので、抵抗感なくすんなり腑に落ちたのです。今は私が後輩に対し「傾聴」「承認」などを繰り返すことで、後輩が自己評価をもとに上質な仕事を追及するサポートをしています。
やりがいに繋がる願望は支援的な関わりから
Q. 今では事務所のほとんどの方が『頂点への道』講座をご受講くださっていますが、組織全体としてはどのような変化がありましたか?
植木 みんながより生き生きと働くようになったと思います。個々人が「どうしてこの会社で働くのか」といった理由や、自分が目指す理想を描いたからこそ、働く姿勢が以前とはまったく違いますし、考え方がポジティブになりました。
丸山 私も働くのが辛い時期がありました。そういうときは「何でこんなに働かなければならないのか」ということばかりを考えていたのです。でも、代表や先輩方からの支援的で温かい関わりを受けるなかで、「自分も仲間のために頑張りたい」「この仲間とともにお客様の力になりたい」という思いが芽生え、たとえ残業が必要になったとしてもやりがいを感じながら働くことができるようになりました。また、みんなが同じ講座で学び、共通言語が事務所内に浸透したことが、相互の理解と協力体制を強化したようにも思います。
組織の状態を数値で把握、的確に理念経営を強化
Q. さらなる理念浸透を図るべく、今後力を入れることがあれば教えていただけますか。
植木 今特に力を入れているものの1つが「理念浸透プロジェクト」です。じつはそのリーダーを丸山がやってくれています。
丸山 プロジェクトのなかでも特に注力しているのが、個人理念の明確化です。先日、貴社の「理念浸透サーベイ」を利用したのですが、それによって組織の状態を項目ごとに数値として把握することができました。その結果からわかったのが、理念経営を強化するためにはさらなる個人理念の明確化が必要だということだったのです。
植木 私たちの事務所は年に1回、私たちの理念経営に関する取組みをお客様にも分かち合う「事業計画発表会」を行っています。そこでは、メンバー一人ひとりが「なぜこの組織で働いているのか」をテーマにプレゼンテーションもします。それに向けてお互いがフィードバックをし合うことで、個々の理念がより明確になっていくのです。この取り組みも「理念浸透プロジェクト」の一環です。
主体的な学習でメンバーが急成長
『頂点への道』講座を受講し始めて、約3年が経ちました。今では幹部をはじめ、多くのメンバーも主体的に学び、一人ひとりの著しい成長を感じます。
例えば植木の場合、初受講時にはマネジャーでしたが、理念や代表である私の思いや判断基準を東京・仙台のメンバー全員にわかりやすく説明してくれるようになりました。その成長は、植木の取り組みに感動した彼女のお客様が『頂点への道』講座を自ら受講し始めるほどです。また丸山は、メンバーからの推薦で選ばれる社内タイトルを多く獲得するようになり、理念に共感した主体的な人材に成長してくれました。
今、ともに働いているメンバーが私の宝であると同時に、誇りです。だからこそ、私は社会への貢献の幅を拡げ、やりがいで社員をもっと幸せにしたいのです。
私たちが社会に貢献する方法。それは、お客様にとことん節税してもらったうえで、気持ちよく納税してもらうサポートをすることです。私たちは、このことが日本をより強く健全な国にすると信じています。
そのために私たちが掲げている目標の1つが、事務所のメンバーからプロスピーカーを10名輩出することです。専門知識ももちろん重要ですが、それだけではお客様に「気持ちよく」は納税をしていただけないと私は思います。必要なのは「伝える力」です。私たちのミッションを伝え、お客様の共感を創り出し、私たちの思いに心から賛同していただくことこそが、気持ちのよい納税には欠かせないと思っています。また、これから入ってくる未来のメンバーを含め、事務所内にさらに理念を浸透させていく力、これもまた「伝える力」です。はじめは、プロスピーカー5名を目標に掲げるのも苦しい状態でした。しかし、社内に理念が浸透し、またアチーブメントが開催する「理念就活フェスタ」を通じて採用したメンバーが増え、目標を上方修正できました。
理念をさらに浸透させ、社員・顧客・社会にとってすばらしい組織に成長し続けること。そのために、「組織の成長は代表の成長から始まる」ということを忘れず、アチーブメントのサービスをすべて利用しながら学び続けます。