倒産寸前からのV字回復するも社内の温度差に違和感
2011年、創業100周年を迎えたころに運転資金が底を付き、倒産寸前まで陥りました。それは、ちょうど父から事業承継するタイミングでもあり、何があっても絶対に会社を潰せない状況だったのです。会社の資産を売り、なんとか用意できた300万円を担保に、銀行より条件付きの融資を受けました。そして、その資金をもとにして、起死回生の一手で、新規事業に挑戦したのです。それが新しいワークスタイルを提案するという事業でした。その背景にはこれまで取り組んできた事務用品やOA機器の販売の事業で常々感じていたことがあります。事務機器を購入するお客様は、その商品そのものが欲しいのではなく、商品を活用してより生産性の高い働き方を求めているはずです。それであれば、お客様が持つそんなニーズにダイレクトに応えられる事業をやったら良いのではないかと思い、事業転換を決断したのです。そして、新しいワークスタイルを提案するからには、まずは自社から変えていこうと、リモートワークができるITツールや社内制度改革に着手。またそれを実際にお客様に体験していただけるように自社を体験型ショールームにしたところ、国が「働き方改革」を推奨し始めていたタイミングと合致し、多くの反響がありました。2016年には総務省の『テレワーク先駆者百選企業』に選ばれ、2018年には最高賞である総務大臣賞を受賞することができたのです。
「全社員が企業理念とビジョンに向かい一致団結している」という私が理想とする組織を追求すべく、その流れに乗り中途採用と新卒採用の両方に力を入れ始めました。しかし、売上のV字回復という大きな成果とは裏腹に、社内には一体感がなかったのです。理念もビジョンも掲げ、世間的には倒産寸前から総務大臣賞を受賞するまでに発展したことを評価されているのに、なぜ社員はもっと情熱的に働いてくれないのだろう、なぜ私の言うことに理解を示してくれないのだろう。そんな心の中に消化しきれないもやもやとした感情がありました。一体どうやってこの状況を打破したらよいのか分かりませんでした。そんなとき尊敬している先輩経営者からアチーブメントのことを聞き、『頂点への道』講座の受講を決めたのです。
学んだ先に訪れた本当の試練と成長
受講して率直に感じたのは、ビジョンの実現を追いかけるという私がやってきたことそのものは決して間違っていなかったという確信でした。目標ではなく目的を追いかけること、それが成功の原則であると学んだからです。そして、より深いレベルで私に変化をもたらしてくれた気づきが、「社員がこの会社で働くことで、自分自身のビジョンを実現していける、それこそが良い会社である」ということでした。学ぶ以前の私にとっての良い会社の定義は、「自社のビジョンを実現させて、世の中に必要とされる会社にし、同時に利益もしっかり出して社員に還元すること」でした。ですので、さまざまな施策を考えて実践してきましたが、会社のビジョンだけではなく社員一人ひとりも明確なビジョンを持ち、そこに向かって内発的に頑張れる環境を作ることが必要だと気がついたのです。そして、その一人ひとりのビジョン実現を最大限にサポートする仕組みを作ることが重要だと学びました。
社員にビジョンを明確化してもらうために、アチーブメントの受講を会社として推進しました。良かれと思って取り組んだことでしたが、結果的には価値観の合わない社員が1/4辞めていくことになったのです。「なぜ理解してくれないんだろう」そんな苦悩を抱えました。しかし、こここそが私の成長のポイントだと思い、この状況に不安を感じている社員に、必ず明るい未来が待っているから、まずは3か月頑張ろう、力を貸してほしい、一緒にこの危機を乗り越えて成長していきたいと正直に伝えたのです。そして、ともに現場をやりきっていくとともに、受講を通して社員たちが描いてきた願望実現に全力投球して、支援していくことに取り組んでいきました。
手にした組織の飛躍、決意した業界への貢献
この苦しかった3か月を力を合わせて乗り越えた先にあったのは、昨期を上回る達成です。結果として残ってくれた社員は僕の考え方に共感してくれたメンバーばかりでしたので、これを機にこれまでにない主体性を発揮してくれるようになり、社員数は減っても昨期対比110%の成果を残すことができました。「真の良い会社」すなわち「社員のビジョンが実現できる会社」を必ずつくる。受講を通して明確化したこの信念のおかげで、諦めずに妥協せずに突き進むことができました。そして、組織が生まれ変わっていったのです。社員の願望実現を私の願望実現としていくこと、そして社員の幸せを追求していくこと、この目的を追う大切さが身にしみてわかりました。
いまは「中小企業の笑顔溢れるワークスタイルモデルカンパニーになる」というビジョンのもと、各企業に合う〝働き方〟を提案することで、日本の経済の発展に貢献しているのだと、全社員一丸となり取り組んでいます。事務機器業界は価格競争が厳しく、10年前の当社のように経営に苦しんでいる企業がたくさんあります。いまこそ、価格ではなくサービスの質、すなわち顧客の願望を叶えるコンサルティング事業へのシフトチェンジを啓蒙し、日本の経済発展に貢献することが強く抱く願望です。当社がモデルカンパニーとして牽引できるように、これからも学び続けていきます。