右肩上がりの売上とは裏腹に抱いていた葛藤
私が現在の会社を起業したのは30歳のときです。「顧客に貢献したい」という思いで、経営理念を社名よりも先に決め、心の御旗にしてきました。社員の奮闘もあり、業績は右肩上がりで5期目では21・2億円の売上を達成。しかし、成長に比例して増えていったのはお客様からのお叱りの声でした。実際に売上は上がるものの、社内の人間関係は最悪で、ギスギスした雰囲気が蔓延していたのです。掲げた理念とかけ離れている、一体どうしたらいいのかと、葛藤を抱いていたときに、知人からの紹介で『頂点への道』講座を受講したのです。
一番心に響いたのは「経営者は自分自身の人生と経営、二つのピラミッドを一致させていくことが大事」という言葉です。いかに自分が会社の理念・目標という部分だけにフォーカスを当て行動していたのか反省しました。上手くいかない理由は自分にあるのではないか。経営のデザインを考えるよりも、自分の人生のデザインを明確にする方が大切だと腹に落ち、学び続けようと決意したのです。
再受講を通して明確になった深い部分での目的
講座を受け、その基礎理論である選択理論心理学が特に役に立ちました。私は20代の頃から営業の英才教育を受けてきました。テレアポする時は手にガムテープを巻かれ、間違えると灰皿が飛んでくるのが当たり前。人は脅せばコントロールできるという「外的コントロール」の考え方が常識で、それが部下に対する愛だと本気で思い込んでいました。しかし、選択理論を学び、相手をコントロールすることはできないし、外的コントロールは長期的に考えると生産性の低下や離職を招くと知ったのです。今の延長線上に自分の求める理想はない、変わろうと決意することができました。外的コントロールマスターの私がそれを手放すのは容易ではありませんでしたが、継続学習の概念に則り、再受講を繰り返しました。理解・実践・振り返りを続け、一歩ずつですが、社員の願望に耳を傾け、支援するスタンスで指導する双方向型のコミュニケーションが可能になったのです。
とはいえ、振り返ればすべてが試行錯誤の連続でした。講座を学び始めてから人事制度を大きく変えたのですが、組織変革や制度の変化についていけない社員が続出。マイナス26%というマイナス成長を作ってしまい、離職者を17名も出してしまいました。非常にショックでした。創業して初のマイナス成長だったこともあり、社員は自分の理念を理解してくれない存在なのだと疑心暗鬼に陥ってしまいました。
そのときに再度立ち返ったのは講座での学びです。私は人事制度という仕組みの部分にこだわっていました。しかし、土台にある「私」が会社を経営する目的を言語化できていないことに気づいたのです。「私」は何のために会社を経営するのか。この答えに行きつくきっかけは、講座を受講し始めた頃から始めた「新卒採用」にありました。新卒採用を行うと、新卒者が応募に至る経緯だけでなく、親御さんの子育てにかけてきた思いまで見えてきます。その責任の重さを実感するとともに、本当の意味で社員の人生に興味を持てるようになりました。「私は社員の幸せを守るために経営をしている」。そう、腑に落とすことができたのです。
こうして150人の社員全員との面談を始めました。言語化した思いや、人事制度を変えた理由を丁寧に伝え、一人ひとりの話を聞いていきました。次第に社員も理解してくれるようになり、組織が変化していきました。その結果、売上も1年でV字回復し、20%ほどあった離職率も5%近くにまで下がったのです。
理念を語る社員の姿に得た新たな確信
アチーブメントで学んだことを実践していく中で一番嬉しかったのはお客様の声が変わったことです。きっかけは社員からの提案でした。学びを通して事業の本質的な価値を売ることはできないかと考えるようになり、売上や利益ではなく、顧客貢献人数を優先するようになりました。ただ、お客様の満足がゴールでよいのか。そう考えていたら、社員から「満足だけでなく感動を目指しませんか」という話が出てきたのです。嬉しかったです。私の理念が社員にまで浸透していると感じた瞬間でした。
そこからお客様の感動に繋がる仕事を目指すようになり、満足定義をクリアしている2000棟のうち20棟程度にしか感動を届けられていなかったのが、今では年間500棟から感動の声があがるようになりました。お客様からは「もっと家族との時間をとるよ」「仕事頑張るよ」など嬉しいお声もいただき、売上もグループ全体で47億円に。私が学び実践してきたことが間違っていなかったと大きな自信になりました。
手にした未来、さらに続く新たな挑戦
私には、まだまだ実現したいと心から求めている未来があります。一つは「壁を越えてつながりを」というメッセージを発信していくことです。私たちの周りには「個人の成長の壁」「目標達成の壁」など色々な壁があります。そんな壁を私たちが培ってきたイズム・文化で越えていき、壁を越えて輪が広がった先に自分だけでなく周りの幸せに繋がるものがあると世の中に広めたいと思っています。
もう一つは「自分自身の拡張」を進めていくことです。来期は経済団体の会長をさせていただくことになります。数々の先輩経営者の中で、自分がどんな貢献ができるのか、どんな価値を作っていけるのか思案しているところです。
外的コントロールマスターだった私がここまで変われたのは、アチーブメントでの学びのおかげです。これからもアチーブメントで学んだ価値観を胸にチャレンジし続けてまいります。