険悪だった父との関係、先の見えない会社経営
工務店の2代目社長をしています。小学3年のときに父の影響で本棚を設計したのを機に、父の背中に憧れて建築業界を志しました。社会に出てから3年間修業して間もなく、父に誘われ、ともに働くようになりました。しかし、いざ働くと父の嫌なところがたくさん見えてきたのです。威圧的で、意見を曲げず、言うことに耳を貸してくれない。毎日のように父と喧嘩していました。
事業継承をしたのは14年前。これで自由だと思っていましたが、父が会長として残ったため、最初は何も変化はありませんでした。耐えきれず、「隠居してくれ」と伝え、紆余曲折を経て、渋々父は会社を離れました。しかし、父の経営しか見たことのない私がその後取り組んだのは、父と同じ、力による支配でした。このスタイルに限界を感じ、経営・マネジメントの能力開発に2000万円近く投資をして、ありとあらゆる研修を受けてきましたが、どれもやる気や根性の話で、具体的な技術ではありませんでした。暗中模索する中で、紹介していただいたのがアチーブメントだったのです。
初受講で噛み締めた経営の本質
『頂点への道』講座 スタンダードコースの初日、「社員の成長なくして、会社の発展はない」という青木社長の一言に大きな衝撃を受けました。それまで私が注力していたのは、良い商品を開発することでした。馬鹿でも売れる商品を作ればいい、それで売れないのは社員が悪いという考え方でした。もちろんそれでは、育成には関心を持てません。自分だけ良ければいいという利己的な考えだったと深く反省しました。本当はどう生きたいかと考える中で、心に浮かんだのは「縁ある人を幸せにしたい」ということでした。それは、自分がどうかではなく、縁ある人とともに豊かになる、win-winの生き方です。シリーズ講座のダイナミックコース・ダイナミックアドバンスコース・ピークパフォーマンスコースを受講するにつれて、その確信は更に深まりました。心震える感動体験をたくさんしましたが、数字の達成や承認だけではなく、「本気で支援した相手が、幸せを手にした」というときに感動が生まれました。仕事への情熱はこうした感動の中から生まれるものであり、感動を作り出せるかはその人が利他的な考え方を持っているかどうかに左右されると学んだのです。仕事に自信を持ち、利他の心で働ける環境を社員に提供したいと、強く思ったのです。
練り直した企業理念、100年企業を目指す決断
社員の成長を促す上で必要なのは「商品」「職業」「会社」「自分」という4つの自信を高めること。「商品」はすでに良いものを提供している自負があったので、「職業」「会社」という2つを考えました。35年前の創業時に父が掲げた理念に「快適な住環境の創造」という言葉がありました。しかし、半世紀以上前とは違い、今は自分で家を建てずとも快適さは手に入る時代です。「家を建てる目的とはなにか?」を受講を進める中で熟考したのです。その結果行き着いたのが「子供の未来をつくる」という経営理念です。世の中で起こるたくさんの悲しい事件の根本原因は、当事者本人が受けてきた教育に問題があると私は考えます。とくに両親の不和などの人間関係に起因する出来事が非常に多いのだと思います。しかし、意図的に関係を壊そうとして喧嘩をする夫婦などいません。うまくいかないことや嫌なことがあるから、ついしてしまうのではないでしょうか。それがエスカレートして、虐待や、いじめ・差別という負の行動を取ってしまったり、自殺という選択をしてしまったりするのだと思います。では、そのストレスを軽減できる家を建てられたらどうだろうか。毎日生活する家が、その家族の理想にかなったもので、幸せに溢れる空間であったらどうだろうか。望む教育ができるインテリア設計や、家事が楽になる家具・動線など、家造りで工夫できることは無限に存在します。一つひとつの家族に合わせて、子育てがしやすい環境を作ることが出来たら、日本の未来は明るくなると確信したのです。
そして、その目的は決して私の世代で終わらせず、受け継がれ追求され続けるものであってほしいと思い、後継者育成・幹部育成に力を入れ始めたのです。
縁ある人を豊かな人生に導く使命に生き続ける
まずは全社員にこの思いを伝えました。そして、面談や勉強会の数を増やしました。思いに共感した社員は、アチーブメントの講座を受講してくれており、今では全員が受講生になっています。さらに、一人ひとりの目的・願望を明確化するために、社員の自宅トイレに、自身の願望を自問自答する「セルフカウンセリング」のシートを貼るのを推奨し、会社でもことあるごとに話し合い、考え続ける環境を作りました。
成果を出すために必要なのは、考え方を変えることであり、そのためには毎日の習慣から変えていかなければなりません。私が誰よりもその変革にコミットし、必ず全社員が幸せになる組織を作ると、妥協ぜずに続けて来ました。もちろん個人差はありますが、以前と比べれば求める心は育めてきた実感があります。数値としても、月平均契約が0.5棟だったところから、今では2棟まで伸びており、社員数は変わらずに売上130%向上を実現しました。社員の主体性に支えられて今があります。
また、コスモネットという工務店ネットワークを立ち上げて10年になります。工務店が抱える問題を共有し合い、解決・成長していくために事例共有をしたり、実績ある方を招いてセミナーを行ったりしています。現在は全国から31社が参加をしております。勝ち負けではなく、win-winな関係で、日本一目的に忠実に仕事をする工務店の集団として、まずは参加企業100社を目指しています。
これからも社会に貢献する、納得のいく生き方を追求し続けていきます。