上場を目指し自宅マンションで創業
急ぎすぎた成長が招いた組織の歪み
バブルが崩壊した大学時代、「会社員だけが人生ではない」と考えていた私は、卒業後はフリーターとして働き、起業のネタやきっかけをリサーチしようと考えていました。しかし周囲のアドバイスも受け「組織の一員を経験するのもプラスになるだろう」と通信会社にエンジニアとして就職。入社した1995年、世間では携帯電話の普及が加速していました。「21世紀はインターネットの時代になる」。そう確信した私は入社2年目で退職し独立。がむしゃらに働いて貯めた資金を元手に、27歳のとき四畳半の自宅マンションでベイシスを創業しました。
どうせ法人化するなら大きな会社にしよう。「いつか上場するんだ」それが私の野望でした。創業した2000年に『頂点への道』講座を受講。講座では成功のエッセンスを学び、自分自身の人生の目的を深く掘り下げ、そこから一貫した人生を生きるための「アチーブメントピラミッド」を作成。そして会社のミッションやビジョンを言語化しました。今思えば80点の未完成なものでしたが、常にこの使命感に生きる人生を送りたい、そう強く思ったのを覚えています。
事業は狙い通り急成長し200名規模に拡大。その成功体験が「自分のやり方は正しい」という自信をさらに強固なものにしていきました。しかし、現実は甘くありません。成功の裏で組織は静かに崩壊し始めていたのです。
エゴとプライドが招いた経営危機
「どん底」を支えた本当の使命
急成長の裏側で、理念から乖離した行動をとる社員が急増。組織は一体感を失いバラバラの状態に。ネット掲示板では、明らかに社内の人間が書いた誹謗中傷の数々。同じ釜の飯を食っていたはずの仲間からの匿名の言葉が、私の心を深くえぐりました。
この状況をどうにかしなければ。その一心で全国の拠点を自ら回り、社員の前で「この状況はすべて私の責任です」と頭を下げました。
そして、改めて会社の理念とビジョンを語り「共感できないなら、この船を降りてもらっても構わない」と、私の魂をぶつけました。約1割の仲間が去りましたが、残った社員と団結し、業績は2年でV字回復を果たしたのです。
しかし、本当の試練はここからでした。勢いに乗った私は再び上場に向け新規事業として子会社を4社立ち上げるもすべて失敗。「社員の前でかっこ悪い姿は見せられない」。私のちっぽけなエゴが冷静な判断を狂わせました。日に日に悪化する資金繰りの表を前に、背中には冷たい汗が流れました。「やるって言ったじゃないか」。取引先からの厳しい声、社員たちの無言の視線が私を追い詰め、まさしく「どん底」に突き落とされたのです。
「何のために経営しているのか、なぜ上場を目指すのか」。二度の上場失敗を経て、私は初受講のときに描いた「アチーブメントピラミッド」を見直しました。理想を掲げていたものの、いつしか目先の「エゴ」に翻弄されるのが人間です。私も変わらずその一人。そんな自分と再受講などをとおして向き合い、私の使命とは何かを深く自問自答し直しました。「信じてついてきてくれた仲間、苦しいときに支えてくれた家族、そしてお客様。私の使命はそんな人々を幸せに導くことだ」。立ち返ったのはやはりここでした。
徹底した理念とミッションの浸透
三度目の挑戦で上場を達成
改めて目的が明確になると人は力が湧いてきます。縁ある人たちを必ず幸せにする、そのために私は上場への三度目の挑戦を決意しました。「今回こそは99%いける」。それは、根拠のない自信ではありませんでした。派手で闇雲な「飛び地」の新規事業ではなく、本業に集中し、マイルストーンを緻密に立て、あとはひたすら実行。
そして3年後、ベイシスは計画通り上場を果たしました。これは奇跡ではなく、明確な目的に基づき、丁寧に、着実に、やるべきことを積み上げた先にあった必然の成果です。「ようやく本当のスタートラインに立てた」。13年越しの目標を達成し、喜びとともに次なる挑戦への希望に満ち溢れていました。
私にとって、上場はゴールではなく、関わる人々を永続的に幸せにするための、新たなスタート地点です。そのために注力してきたのが「組織文化」のさらなる浸透です。なぜなら「ビジネスモデルは真似できても、文化は決して真似できない。これこそが最強の競争優位性になる」と確信しているからです。2021年から幹部とともに『理念浸透プログラム』、2025年からは『i-Series』なども活用しつつ、毎月、新入社員に対し自ら3時間かけて理念研修を実施し、想いを組織の隅々にまで浸透させる取り組みを行っています。
25年間欠かさない「学びの習慣」
使命を磨く「ピットイン」の価値
振り返ると、創業から25年が経ちます。良いときも悪いときもアチーブメントピラミッドに立ち返り、軌道修正しながら技術を実践してきました。様々な経験を重ねてきましたが、定期的に『頂点への道』講座を再受講し、自らの軸を確かめる時間が私のベースとなっています。どんな人間でも、必ずズレは生じる。どこか甘さが出たり、忙しさのなかで優先順位がいつの間にか変わってしまう。そうしたズレをリセットし、学びの過程でより純度100%の使命に近づいていく。そのために「ピットイン」をして自分自身をメンテナンスすることが不可欠だと思うのです。今はともに学ぶ社員も増えました。何よりも受講して良かった点は、受講当初に自分が求めていた「使命感を持って生きたい」ということを100点満点で果たせているということです。
これからの10年で、グループ会社から100名の経営者・幹部候補を育成していきます。ベイシスがいることによって業界全体がアップデートしていく。業界でオンリーワンの存在を目指し、これからも挑戦を続けてまいります。












