弱小チームを日本一にした“非常識な指|アチーブメント株式会社

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組織を勝たせるリーダーの発想法

弱小チームを日本一にした“非常識な指導法”

2006年、北海道日本ハムファイターズは、実に40年ぶりに日本一を獲得し、2016年には、パ・リーグで15連勝という記録を樹立し、リーグ優勝、日本一に輝いた。かつて弱小チームと呼ばれたファイターズを常勝チームへと変えた功労者が白井一幸氏。球界で非常識と言われ続けた育成手法とは?

白井一幸

白井一幸

北海道日本ハムファイターズ 1軍内野守備走塁コーチ兼作戦担当

駒澤大学を卒業後、1983年ドラフト1位で日本ハム入団。1987年ベストナイン、ゴールデングラブ賞受賞、1991年リーグ打率3位、最高出塁率を記録。現役引退後、日本ハムの球団職員となり、二軍総合コーチ、二軍監督を経て、2003年から一軍ヘッドコーチを務め、リーグ優勝2回、日本一1回を獲得。2014年より北海道日本ハムファイターズ 一軍内野守備走塁コーチ兼作戦担当を任され2016年に10年ぶりの日本一に輝く。JPSA認定 ベーシックプロスピーカーとして全国で講演活動を行う。著書として『メンタル・コーチング潜在能力を最高に発揮させるたったひとつの方法』『わが子を一流選手にするメンタル・コーチング』を刊行。

世界一のチームと弱小チームの決定的な違い

― 2016年に北海道日本ハムファイターズは10年ぶりに日本一を達成されました。今でこそ常勝チームのファイターズも、白井さんがコーチに就任されていた2006年に日本一となるまでは弱小チームと呼ばれていたそうですね。

はい、現役時代に、私は個人でタイトルをとり、日本記録も作ることができました。しかし、チームの日本一は全く経験することなく、毎年最下位争い。チームとして40年以上、日本一とは無縁でした。指導者の道を選んだのは、そこに対する悔しさもあったのでしょう、「指導者として今度こそチームを日本一に導く」という強い思いを抱き、まずは指導者として学習するために世界一を数多く手にしていたニューヨーク・ヤンキースに留学したのです。留学時代に私は徹底的に「世界一のヤンキース」の分析をしました。「なぜこのチームは世界一を何度も取ることができるのか」「他のチームとの違いは何か」と徹底的に分析しました。その結果、気づいた強さの秘密、それは、「ヤンキースに関わるすべての人が世界一を目指している」ということでした。それは例え、レギュラーから程遠い6軍の選手でも同じです。もっと言えば、グランド整備の方々も含めた、「ヤンキースという組織」に関わる全ての人が「このチームで世界一になる」という目標を持っていました。その目標のためにそれぞれが自分の役割に徹し、そのチームに属して世界一を目指していることに誇りを持っていたのです。「チーム全員が世界一を目指している」、聞いてしまうとシンプルですがまさにこの点に、世界一の鍵があると確信しました。

球界から大批判の”非常識なマネジメント”

― 帰国されたのち、2001年にファイターズの2軍コーチに就任されました。ヤンキースで得られた学びをもとに、当時はどのようなチーム改革をされたのでしょうか。

私は、ヤンキースでの経験をもとに、「日本一を目指すチーム」への転換を目指しました。しかし、長らくチームの優勝から遠ざかっているチーム、それも2軍の選手たちに「日本一を目指そう」と声高らかに伝えても、当然ながら温度差が出ますよね。だからこそ、選手たちには自らやる気を出してもらう必要がある。選手の「身体」を動かそうとするのではなく、「やる気」を動かす手助けをしようとしました。つまり選手育成の方法を変えることにしたのです。
そのためにまずは選手とのコミュニケーションの方法を変えました。これまでの球界の常識ですと、「怒る」「教える」「やらせる」といった『指示・命令・恫喝型』のティーチングが一般的です。むしろそのアプローチしかないと思われていました。しかし、私が行ったのは、真逆でした。「怒らない」「教えない」「(強制的に)やらさない」手法。その代わりに使ったのが、ミスをしたときには怒らずに「励ます」、ミスの原因について「質問しながら原因を考えていく」、選手自身の理想の姿から必要な練習に自ら取り組める「環境を整えていく」ことでした。

― 先駆的な取り組みで「そんな方法では甘い」といった批判も多かったと想像されますが、なぜその方針を貫けたのでしょうか。

それまでのファイターズは確かに弱小でしたが、指導者も選手も決してさぼっていたわけではないんです。むしろみんな必死で頑張っていました。しかし、結果が出ない。なぜなら、「頑張り方を間違っていた」からです。それが先ほど言った、『指示・命令・恫喝型』の育成方法にあるからではないか、だからこそ、そこからの転換は絶対に必要だという確信があったからですね。もちろん当時は「2軍の選手なのにそんなに甘やかせてどうする!」「白井はアメリカかぶれになっている」「今までの日本のやり方を否定するのか」「指導者としての仕事を放棄している」など、数多くの批判を受けました。当然ですよね。なぜなら、怒れば怒るほど「厳しくて素晴らしいコーチ」、教えれば教えるほど「理論家で素晴らしいコーチ」、やらせればやらせるほど「情熱的で仕事熱心なコーチ」だと評価されていました。その評価を受けることが間違っているのだと言い切ったのですから。チーム内での壁というより、外部からの批判が一番の壁だったといえるかもしれません。しかし大切なことは指導者がどう評価されるかより、「選手の視点」です。選手がプレーでミスをして、それをにらみつけられ、怒られたとして、選手に何かプラスになることはあるでしょうか。むしろ選手は「そんなこと分かってるよ、俺だってミスしたくてしたんじゃないんだよ」「なんでこの人は俺の気持ちを分かってくれないんだ?」と、声には出さなくとも、徐々に心の距離は広がっていきます。ティーチングではなくコーチング、つまり選手がもっている能力に自ら気づくための手助けが、「励ます」「質問しながら原因を考えていく」「環境を整えていく」ことだったのです。

常識を打ち破る育成手法で日本シリーズ優勝に導く

選手の視点からの目標と目的の共有

― 「日本一」の目標はどのように共有していったのでしょうか。

「日本一」という目標に対して、そのための具体的な計画と、段階を追った目標を提示しました。何より重要なのが、「ゴールの先にある価値を伝えること」です。私は選手に次のように伝え続けました。「指示・命令・恫喝型の指導法を変化させて、日本一になったら自分たちは球界の先駆者になれる、だから私たちが勝つことには意味があるんだ」と。アチーブメントでよく言う、目標を目指すための目的を伝え続けることです。実はチームの目標を達成することが、自分の個人としての成長に繋がるということも示すべきです。例えば、「苦しい練習からサボる」ことで、本人にとってはよくても、チームにはやはり悪影響があります。さぼった選手がチームに与えた悪影響で責任を取れるかといったら取れないわけです。だからこそ、チームの一員として持っている責任や役割を「背負う」ことは、実は大きく自分の成長に貢献しているんだと思えるとチームの目標が自分事になっていきます。

誰かがミスをするほど強くなっていくチーム

― そうした取り組みでチームにはどのような変化がありましたか。

「励ます」マネジメントにしていくことで、ミスを恐れないチーム体質が確立していきました。他のチームはミスをすると、雰囲気が険悪になりますが、ファイターズは真逆。にらむ人も、怒鳴る人もいません。「〇〇!ドンマイ!ミスはつきもの!大事なのはミスした後に消極的にならないこと、ミスを出したときほど元気に行こう!」。こういう関わりをしていくと、選手はミスを恐れなくなりますし、周囲は、ミスをカバーしようとより一層頑張る。ミスをしたときこそ、ますますチームは団結していくという善循環が始まりました。「日本一にすぐになることはできないかもしれない、しかし、日本一にふさわしい今日の練習だったらできるはずだ、私たちは日本一を目指すプロセスにこそこだわろう」という私が伝えてきた考えが徐々に浸透していき、日々の練習の質が高まっていきました。2003年には私が一軍ヘッドコーチに就任し、2006年にファイターズは44年ぶりに日本一を果たしました。その後、私はチームを離れましたが、2014年に再びチームに戻り、2016年に10年ぶりに日本一を実現しました。

一流の指導者が持つ育成の思考とは――

― 白井さんの指導方法を伺うと、「そこまでして育成するのは時間がかかり面倒だ」という声もありそうですね。

よく伺う声ですね。ただ、そう考えてしまうときに、その「主語」は誰になっているでしょうか。「『私は』めんどくさい」という「自分」が主語になってしまっていないでしょうか。実は何を隠そう、私もどこかでそう思っていた部分がかつてはありました。「私は選手のために指導してあげている」「伸びないとしたらそれは選手の努力・能力不足」だといつの間にか思ってしまっていたのです。この時に自問したことは、まず、「私にとって、指導者としての理想の姿は何なのか」ということです。出てきた答えは、「選手を勝たせること、選手が成功することでしか私にとって成功はない。であるならば、私は指導してあげている立場ではなく、選手の成功に関わらせていただいている立場ではないか」というものでした。だから指導者として、もし選手が育たないとしたら「それは全て自分の責任だ」と考え方をシフトできたのです。本当の意味で、選手の成功を自分の成功だと捉えられるようになったのは「理想の姿」が明確になってからだと思います。このように考えていくと、「時間がかかり面倒だ」という発想と、「根気よく育成に取り組む」という発想では、どちらが選手にとっていいのか考えると答えが見えてくるかもしれません。

― 一流の指導者に求められる条件とはどのようなものでしょうか。

3つのポイントがあると思います。
・選手を成功に導く、結果を出してもらう
・相手の成功を自分以上に喜べるマインドを持っている
・相手の可能性を100%信じことができる

これらを持つためには、前述した指導者としての理想の姿がないとできません。こうした指導法で日本一になった後、全国から講演の依頼をたくさんいただきました。その時に、「白井さんはいつアチーブメントを学ばれたのですか」と言われるほど、アチーブメントが伝えていることが同じだったことに驚きました。もしプロ野球の指導者全員がアチーブメントの研修を受けたら、日本の野球のレベルはもっと高いレベルにまで高まるはずです。だからこそ、プロスピーカーとしてこの指導法を伝え続けていきたいと思っています。共に、一流の指導者に向かって邁進していきましょう。

プロスピーカーとして全国から講演依頼が殺到し、毎回150名程が参加する大盛況

プロスピーカーとして全国から講演依頼が殺到し、毎回150名程が参加する大盛況

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